鼻唄まじりに囁かれるのはどんな毒よりきつい甘言でした
彼女は振り返らない。
私は彼女の名前すら知らない。ただ戦うためだけにここへやってきた彼女は、自分はいつ死ぬか解らないからと、思い出を増やすだけのひどいことはしたくないからと、素性は一切明かさなかったから。
名前も。生まれも。経歴も、何もかも語らなかった。
唯一隣にいたのは旧友らしい男。彼も自分たちについて聞かれると途端に口を閉ざしてしまっていたけれど、私たちは気にしなかった。争いの最中に現れた彼女らが私たちにその凄惨さ残酷さを一瞬でも忘れさせてくれた。
けれどやって来る。再びの開戦が。侵略の襲来が。
争いは私に彼女らをもたらし、そして同時に彼女らを奪っていった。腕一杯に抱えた楽しい思い出だけをそのまま残して。
彼女らがこの争いを生き残ったのかはわからない。戦死者の名を聞いたところで私たちは誰一人として彼女らの名前を知らなかったし、この国に属さない傭兵たる彼女らの訃報をわざわざ広める必要も、なかったろうから。
私は生き残った。戦火から、飢餓から。こうやって生き残った。
名前も知らない彼女は今、どこで戦っているんだろう。
>本編のプロットすら書いてないけのに何故か誰かさん視点。んー、早く書かないと、なぁ
PR
この記事にコメントする
カレンダー
アーカイブ
最新記事
ブログ内検索
プロフィール
HN:
xxx
性別:
非公開
趣味:
昼寝
自己紹介:
チョコを与えればいくらでも長持ちします。辛いものやすっぱいものを与えると途端に溶けます。長期に渡って使用される場合は、一日に板チョコを一枚与え、快適な室温、湿度の部屋に放置してください。さみしくなると勝手についてきます。