保存不可能
リセット機能は使用できません。
お前ばかじゃねぇの、というひどくぞんざいな言葉が投げかけられたのは、消毒液の匂いのしみついたシーツの中で、その意識が浮上した時だった。ここはどこだろうだとか、なんでここにいるんだろうだとかは放っておいて、とりあえず自分に向かって落とされた言葉に少年は口を開く。
「……ばかじゃない」
「じゃア何だよそのザマは」
「……これは、」
「はいはーい、じゅーびょーにんは大人しく寝てようなー」
自分から聞いておいてなんだそれ、と無理やりに上体を起こした少年は口を尖らせ、ようとして、ふと気付いた。
「……お前だけか?」
「あン?」
「……いや」
しゅん、としたように見えなくもない彼に、見下ろす青年は口端を吊りあげて笑う。肉体的に弱っているからか、今の少年はひどく素直だ。普段とくらべれば。
そう、彼がいるということは――彼の持ち主であり少年の飼育係たる少年が来ているということ。超に超を重ねて過保護なその彼が自分が目覚めたというのにここにいない、それに少年……いや、実年齢からすれば少年とはとても言えない彼は、子供っぽくむくれていたのだ。
「サクラなら今手前ェ用にココア買いに行ってンぜ」
「……ん」
「とりあえずよォ、カナ」
「ん?」
ことんと首をかしげて見上げた青年は、夕日にも似た朱色の瞳を鋭く細めて言う。獣に牙を剥かれているような錯覚に陥る中で、それでも少年は、見上げたままで続きを待つ。
「な――」
んだよ早く言え、と、言おうとして、ドアの開く音がした。
>
PR
この記事にコメントする
カレンダー
アーカイブ
最新記事
ブログ内検索
プロフィール
HN:
xxx
性別:
非公開
趣味:
昼寝
自己紹介:
チョコを与えればいくらでも長持ちします。辛いものやすっぱいものを与えると途端に溶けます。長期に渡って使用される場合は、一日に板チョコを一枚与え、快適な室温、湿度の部屋に放置してください。さみしくなると勝手についてきます。