half

手に入れるための破棄には何の意味もなくて、進むための選択ですら足踏みにしかならない。
この手の中には大切なものがひとつ。目の前の扉をあけるにはこれを捨てて鍵を受け取るしかないんだ。
いない君に訊ねたって答えは返ってこない、俺が選ばなければならない。
二つを天秤にかける、大切なものが掲げられる。ああ、これは選ばれなかったのか。
簡単な選択だ、掲げられたものを、選ばれなかったものを捨てるんだ。空になった手で鍵を受け取れ。

手に入れるために捨てた、揺らした天秤が掲げた方を。
そんなに勇敢な選択だ、いつまでも迷うことはない。
捨てたものを振り返ってはいけない、悔んではいけない、捨てることを怖がってはいけない。
その涙と引き換えに、俺は旅を続ける。
これは選択なのだから。

この道を進んで本当に良かったのか？
選んできた正しさをただ祈る。
選びそこなったものなんてない、辿った途中の現在地。
俺は今何を求め続ける？

何かと何かを天秤にかける、選ぶという行為を選ぶ。
ひどく悲しいくらいの取捨選択を選んだのはこの俺だ。
いつの間にか拾っていた大切なものを――失い難い光をあっけなく掲げる天秤、何かを手に入れるために何かを捨てるこの矛盾も、俺は受け入れなければいけない。


俺は歌う、旅の中、君に届けと。いつまで歌は続くだろう。


たくさんの足音を耳にした。それらは淋しさを忘れさせてくれた。どんなことを思っても昇る日は同じ。
霞んだ目を凝らして君を失ったこの世界を見つめる。色を失ってもこの世界は変わらない、ただ何もしないで廻っているだけ。

この救いようのない世界は俺の望んだもの。君がいない世界、俺が進むと決めた世界、俺が鍵を受け取って開いた扉。
コンパスなんて役に立たない。でも捨てそこなった。
進むべき場所を指してくれなくても、それでも何かに縋っていたくて。
地図なんて役に立たない。でも破りそこなった。
夢の描かれたそれを開くときは来るのだろうか。どんな顔をして俺は開くんだろう。

この世界が君を失ったとして、俺はまだ選択を続けなければならない。
君以外の大切なものを捨てて、君以外の大切なものを得る。
記憶の中にいる君にさよならを叫んだ、歩き続けるために。正しさを祈って、再会を祈って。

君を失ったこの世界をもしも俺が愛せたならば、その時は君に会いに行くよ。
この旅の果てに出会えた何かと一緒に。
正しさを祈って、再会を祈って。


さぁ、行こうか。
その涙と引き換えに、その記憶と引き換えに、この唄と引き換えにして。




＞BUMP二曲つなげてみた。一曲一曲で聴いたら奴っぽいのにつなげると別人になるとは何事だ（は）バラバラで聴いてもつなげて聴いてもこの二曲は泣けますよ。むしろBUMPは泣ける曲ばっかりだよ。「世界」には「全体が共有する世界」と「自分個人の持つ世界」の両方がそれぞれに確立しているわけだけれど、この中の「世界」はその両方が混在してるからかなり解りにくいことになってる。自分でも混乱しそう。