Rapunzel
床に転がる砂時計、折れ曲がった秒針、歯車の外れた振り子、あぁ、この部屋の時計はこれで全部か。時の移ろいを、時の流れを体現するものはこれで全てか。
耐えられない。このまま、あの人がいないままに私の時が繋がれるだなんて耐えられない。
時なんて止まってしまえばいい。そうすれば私もあの人も彼も彼女も苦しまないで済むのに。私からあの人を奪っておいて、まだ私を苦しめようというのか、この世界は。
なにも忘れたくない。私は目を閉じた。
過去に、あの人を過去にするくらいなら、私は。
月に向かって歌を歌うよ。隣にいたあの人に歌いかけるように、囁くように。
あぁ、一つ一つが紡がれて消えるその間にも時は過ぎゆくのか。私とあの人を置いて。
涙が私の世界に隙間を作るよ。誰がそこを埋めてくれるんだろう。引き裂かれてそのまま、私の世界はツギハギだらけだ。
なにも欲しくない。私は時を止めた。
砂は落ち続けるけれど、針は変わらず進むけれど、私の時は、もう動かない。
何もなくしたくないから。
長い髪は過ごした時の証。これだけの時間、あの人とともに私はいた。それは――いつまでも変わらないから。
明日のない迷宮に迷い込んでも、きっと大丈夫。今日から零れた過去も抱きしめられると思うよ。
遠い日の今日私は歌を歌っていた。隣にいたあの人に囁くように。
もうあの日はやってこないけれど、私の世界はツギハギのままだけれど、月が照らしてくれるから。
流れた時間に逆らうように、私は。
>歌い手さんは分らないけれど、某音ゲーの曲。曲調好きだなぁ。選曲は某主犯者。今思えば超ナイスだと思うんだ。この中での「あの人」は本編には一切出てきてないキャラです。きっと、凶界の第三部でやっと出てくるぐらい。この子らのすべての行動の原因であるのにね。ちなみに、「あの人」が「彼」や「彼女」のような代名詞にならないのは性別不明だから。見た目で分かるだろうという突っ込みには、某禁書目録の一方通行を思い出していただければ(こら)あー、こういう細かい話も書きたいなぁ