half

それは努力次第だねと、彼は言った。
けれど、努力して目標地点へと辿り着けるなら、頑張って目的地点へと行き着けるなら、世界中の誰だって努力するし頑張るでしょう。そんなのただの偽善で、どうしたって世の中勝者と敗者で構成されてるんだよ。

たとえ話とか嫌いだから、しないけども。でもやっぱりどうしたって誰かが勝って誰かが負けてるんだよ。努力以前の根本的な問題で。負けた奴はどうしたって――努力したって勝つことはないし、その逆もまた然り。
運命は神様が決めてるんだよって言うわけでもないけど、ないけど、どこかぼくらには全く分からないような場所でそういうことは決まってるんじゃないのかな。
人間なんかのちっちゃな力じゃ揺らがない、そんなことが。

努力次第だなんて、そんなの、時の運でしょう。

つまりは保留ってこと。
結果は先延ばしにして、とりあえず時間稼いで博打に出る、そういうこと。
臆病なのか勇者なのかよくわからない。

高いところにある目指すものに手を伸ばして背伸びしたところで所詮届かない。
努力？　そんなのいつの時代の言葉なの。より遠くへ手を伸ばそうとするくらいなら踏み台を用意しなさい。なんでもいい、誰でもいいから。
努力して頑張って背伸びして無駄なエネルギーを消費するくらいなら他人の高さを利用すればいい、足場から高くしてしまえば届くでしょう？
あなたは棚にあるものを延々背伸びして取ろうとするの？　椅子くらい踏み台にするでしょう？

ほら、届いた。

踏みつけたものなんて見てはいけない、それは絶対的に決められていた敗者だから。
今はあなたが勝者だけれど、次はどうだろう。次もあなたが勝てるとは限らない、今度はあなたが踏み台にされるかもしれない。同じものを求める誰かに。
だから、ね。
踏みつけたものなんて見てはいけない、それはもうただの敗者だ。