half

向けられた背中にかける言葉が見つからない。さっきまで私にやられていた視線は私よりも高い位置で、今は山道の先へ向けられている。どうあっても今晩、彼は私たちから離れるらしい。拾い育ててくれたあの人たちにすら、背を向けて。
ずっとここにいればよかった。朽ちるという概念を排斥し、変化という概念から最も遠いここは、私にとって、そして多分、彼にとっても居心地がよかったはずなのに。
かける言葉は見つからない。何を伝えればいいんだ。何を叫べば彼はここにいてくれる？　私の言葉なんかで彼が意志を変えるはずがない、そんな弱い意思ならあの人に言えないままでいるだろうから。
「どうしても？」
口をつくのは女々しいものばかり。彼は彼なりの決意と覚悟を決めたっていうのに情けない。私はどうしたいんだ。何のために引き留めようとしているんだ。
私のため？　あの人たちのため？
違う、それはだめだ。
他ならぬ彼のためにならまだしも、自分たちのためにその決意を覚悟を無駄にさせる、訳にはいかない。
私が言わなきゃ。彼のために。笑って。
ひらひらと手が振られる。視線が私に向くことはない。あぁ、行ってしまう。
私が言わなきゃ。私が。


声を枯らして叫ぶ。彼のいなくなった哀しさを。一人になった部屋の中で。





＞パソ子がいないから、本編でどんな感じだったか解らなくて苦戦。プロットはあるけど細部わっかんねぇ……！　みたいな。ミィがもうあそこに帰ることはないから、そう思うと、結構あれかもしれない。いつかこの子のちゃんとしたお話が書きたい。張っといた伏線を本編で回収できる気配が微塵も感じられない。てか、これは双子疑惑のあの子のとこで回収しなきゃなんだけど……ちょっと、改編してみたらズレが生まれてしまった。もっかい練り直さなきゃ